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金沢21世紀美術館

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EXHIBITION展覧会

コレクション展1 うつわ

2022年5月21日(土) -
2022年10月16日(日)

"Bone Flower"drawing by Yuki Nara
web banner design by Takuma Hayashi

インフォメーション

期間:
2022年5月21日(土) 〜2022年10月16日(日)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
会場:
金沢21世紀美術館
展示室1〜4、13
料金:
一般 450円(360円)
大学生 310円(240円)
小中高生 無料
65歳以上の方 360円
※( )内は団体料金(20名以上)
※前売り券の販売はありません(当日窓口販売のみ)
休場日:
月曜日(ただし7月18日、8月15日、9月19日、10月10日は開場)、7月19日(火)、8月16日(火)、9月20日(火)、10月11日(火)

市民無料の日:
美術奨励の日:会期中の毎月第2土曜日(6月11日、7月9日、8月13日、9月10日、10月8日)
金沢市民の方は本展を無料でご覧いただけます(要証明書の提示)
お問い合わせ:
金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

概要

本展は、2021年度収蔵作品を含む当館コレクション作品を中心に、現代美術における「うつわ」を様々な視点からご紹介する展覧会です。
「うつわ」という言葉は、特定の働きをする入れ物から道具、人の度量の大きさまで、幅広い意味に用いられるように、容器としての機能を持つものはもちろん、そうした実用性からは抜け出た概念を持つものがあります。
「うつわ」の歴史をひも解いてみると、日本の縄文土器は、集落を中心とした集団生活において、採集した木の実や動植物を保存したり、食物を煮炊きしたりするための器具として重宝されました。その一方で、まるで太古の生命リズムをかたどったような躍動感あふれる装飾や文様を施したものが多く遺されており、実用性ばかりでなく、高い装飾性も評価されています。日々の生活を営むための道具として、また祭しや儀礼に欠かせない祭式具として、古来より人々の生活や信仰を助けた「うつわ」には、人間界と自然界とをつなぐ重要な役割があったことが想像できます。
また、肉体のことを、魂が宿る「うつわ」と言うことがあります。生死のサイクルにおいて魂は永続的であり、容器としての身体にその都度転入を繰り返す、という考え方です。身体を「うつわ」として考えてみると、その容器に宿った魂が、五感を可能にする身体を通じて自然界や聖なるものと結びつき、古い記憶を呼び覚ますような感覚をもたらすこともあるかもしれません。
このように「うつわ」という言葉に様々な意味が宿っていることを心に浮かべながら、生活に最も身近なものである「うつわ」を多様な角度から見つめることで、「うつわ」に込められた意味や価値について考えるきっかけとなることを目指しています。

関連プログラム

ギャラリー・ツアー
開催日:2022年9月10日(土) 16:00〜17:00頃(美術奨励の日:毎月第二土曜日)
会場:金沢21世紀美術館  展示室1、3〜5、13
料金:無料(但し、本展の観覧チケットあるいは友の会会員は入場チケットの提示が必要)
受付:レクチャーホール前
定員:20名 ※当日受付、先着順
ギャラリー・ツアー
開催日:2022年8月13日(土)16:00〜17:00頃(美術奨励の日:毎月第二土曜日)
会場:金沢21世紀美術館 展示室1、3〜5、13
料金:無料
(但し、本展の観覧チケットあるいは友の会会員は入場チケットの提示が必要)
受付:レクチャーホール前
定員:20名 ※当日受付、先着順
ギャラリー・ツアー
開催日:2022年7月9日(土)16:00〜17:00頃(美術奨励の日:毎月第二土曜日)
会場:金沢21世紀美術館 展示室1、3〜5、13
料金:無料
(但し、本展の観覧チケットあるいは友の会会員は入場チケットの提示が必要)
受付:レクチャーホール前
定員:30名 ※当日受付、先着順
絵本を読もう
開催日:2022年7月10日(日) 11:00〜11:40
会場:金沢21世紀美術館 キッズスタジオ
料金:無料
対象:子どもからおとなまで(小さなお子さんは保護者の方とご参加ください)
定員:先着4組

出品作家(姓のアルファベット順)

青木千絵、葉山有樹、アニッシュ・カプーア、久野彩子、イ・ブル、見附正康、中村卓夫、 中島晴美、中田真裕、奈良祐希、ピナリー・サンピタク、佐藤卓、 田嶋悦子、富本憲吉、マイケル・ロウ 他
※出品作家は変更になる場合があります。

主な出品作品

久野彩子《うつろう世界》2016年
真鍮 52×65×69cm
photo: KIOKU Keizo

生命都市としての「うつわ」

久野彩子《うつろう世界》2016年
久野は主にロストワックス鋳造技法を用いて作品を制作しています。グーグル・アースによってふかんして見ることができる地球上の都市を、半球のような器物の形態をベースに、鉄道や高速道路、建造物の輪郭を通じて、精密な鋳造技法の面や線で表現しています。《うつろう世界》において久野は、人間社会における複雑に絡み合う物事や世の中に氾濫する情報、そして、人々が繰り返す建造と破壊、再構築といった行為を、未来へ続く生命エネルギーとしてポジティブに捉えています。

アニッシュ・カプーア《L’Origine du monde》 2004年
©Anish KAPOOR

肉体の「うつわ」

アニッシュ・カプーア《L’Origine du monde》 2004年(恒久展示作品)
カプーアは、ギュスターヴ・クールベの油彩画《L’Origine du monde》(「世界の起源」)を主題に本作品を制作しました。絵画における真実性を追求したクールベが描いた女性の腹部と生殖器をクローズアップして描かれた本作は、現代においても、道徳の価値基準を問い直す意味で、衝撃的な絵画として捉えられました。世界の始まりはブラックホールなのか、闇なのか、それとも身体の内部なのか。《世界の起源》を生命の始まりの「うつわ」として捉えてみると、作品の新しい一面に出会えるかもしれません。

青木千絵《BODY 21-2》2021 年 photo: KIOKU Keizo

身体の「うつわ」

青木千絵《BODY 21-2》2021年
(2021年度 新収蔵作品)

ヒューマン・スケールの身体像は青木自身を象っており、2004年からスタートした 「BODY」シリーズの初期作品は、漆黒の被膜が堅牢な表面となって「他者からの遮断」を意識していたものだといいます。近年は、 「融体化する身体」という主題に取り組み、 漆の鏡面のような質感に鑑賞者が映り込み、鑑賞者を含む周囲の環境と作品が溶け 合うような造形力で漆芸の特徴を活かした新しい境地に 挑んでいます。本作《BODY21-2》は、小さく丸まった身体が、まるで胎児のように感じられ、視覚が円滑な表面になぞるように触覚的に惹き込まれるうちに、母胎の生命と揺らぎながら融けあうような知覚 に訴える作品です。

中田真裕《mirage》2021 年 photo: KIOKU Keizo

中田真裕《mirage》2021年
(2021年度 新収蔵作品)

《mirage》は北陸で見られる蜃気楼をイ メージした作品で、中田自身は焦がれているが未だ見ぬ景色を強く想いながら制作に取り組みました。深みのある緑がかった色は、下塗りから約50回を超えて重ねられ丹念に研ぎ出しによって見事に現れ、大らかな彫線と融合して力強い装飾性を発揮しています。長い歴史の中で継承されてきた堅牢な乾漆と蒟醤の伝統技法について、中田自身はサスティナブルであると言い、対象を捉えようとする自身の身体の動きそのものが彫線となり形となる現代的な表現と伝統技法との間に可能性を見出しています。

ピナリー・サンピタク《ブリリアント・ブルー》2008年
アクリル、カンヴァス 198 x 250cm
©Pinaree Sanpitak
courtesy of Tyler Rollins Fine Art

ピナリー・サンピタク《ブリリアント・ブルー》2008年
(2021年度 新収蔵作品)

タイ・バンコク出身のサンピタクは、様々な知覚や経験を受容する器としての女性の身体に注目し、女性の乳房をモチーフに、生命の起源や自然界との原初的な結びつきを連想させる作品を多数発表しています。女性の乳房を「うつわ」と山の形に関連付けている本作品は、身体に宿る生命の記憶と自然の恵みとが循環していることを物語としてイメージさせます。

田嶋悦子
(左)《Cornucopia 02-XII》2002年 H70×W85×D58cm
(右)《Cornucopia 00-I》2000年 H37×W60×D55cm
陶、ガラス
photo: SAIKI Taku

聖なるものへ捧げる「うつわ」

田嶋悦子《Cornucopia 02-XII》2002年 《Cornucopia 00-I》2000年
作品タイトルとして付けられた「コルヌコピア」は、ギリシャ神話で「豊穣の角」を意味しています。植物や果物などで満たされた角の形をした杯を指しており、陶とガラスによってみずみずしく作られた本作品からは、あふれ出る生命力を感じとることができます。異なる質感を持つ素材が互いに呼応しながら、生成のエネルギーとリズムを内包する有機的なフォルムとして重層的な姿を呈しています。

奈良祐希「Bone Flower_Jōmon」2021年
photo: KIOKU Keizo

建築と工芸の「うつわ」

奈良祐希「Frozen Flowers」2022年 インスタレーション
2021年度新収蔵作品《Bone Flower_Jōmon》《Bone Flower_Yayoi》2021年、 他

建築空間を設計できる陶芸家の奈良祐希は、「設計の陶芸」をコンセプトに、制作拠点である金沢特有の自然風土の陰影や太古からの生命リズムの波形をCADとプログラミングにて設計し、3D空間に「炎」として現出させます。2016年に発表された「Bone Flower」シリーズは、生命感あふれる炎のエネルギーとの共鳴が、太古から現在までの時空の境界を失わせるようです。本展では、新収蔵作品《Bone Flower_Jōmon》(2021年)などに加え、当館光庭の全面ガラスの展示室にて、生命の持つ「揺らぎ」の一瞬を凍結する「Frozen Flowers」という新作インスタレーションを発表します。

奈良祐希「Frozen Flowers」2022
photo: KIOKU Keizo

中村卓夫 C-unit 佐藤卓《茶箱プロジェクト: 素材による形状と比率に於ける選択と用途の検証》2010年
錫、竹、陶、漆、木、ガラス
酒井忍、本江和美、大村修一、吉田安喜、中村卓夫、竹村友里、青木有理子
photo: ©amana inc.

「うつわ」の大きさ 拡大と縮尺

中村卓夫 C-unit 佐藤卓
《茶箱プロジェクト: 素材による形状と比率に於ける選択と用途の検証》2010年

本プロジェクトは、金属や竹、木、ガラスなど普段はそれぞれ異なる素材を扱う7人の作家が集い、新しく茶箱を作る試みです。佐藤卓はデザイナーとして、各アイテムの形状をデザインすることはせず、サイズの比率のみを5段階で指定しました。佐藤には、「形状というものは素材や技法と密接に結びついており、その関係を壊すべきではない」という考え方があったためです。このサイズの変化というシンプルな指定により、道具から従来の機能が取り払われ、各作家により生み出された道具は、新しい見立てによる自由な組み合わせが可能となる茶箱に生まれ変わりました。普段使い慣れた「うつわ」や道具も、ほんの少し視点を変えるだけで、新たな機能や役割を帯びることを示唆しています。

Images

    コレクション展1 うつわ 2022年5月21日~2022年10月16日
    金沢21世紀美術館 展示風景 撮影:木奥惠三 

    コレクション展1 うつわ 2022年5月21日~2022年10月16日
    金沢21世紀美術館 展示風景 撮影:木奥惠三 

    コレクション展1 うつわ 2022年5月21日~2022年10月16日
    金沢21世紀美術館 展示風景 撮影:木奥惠三 

主催/ほか

主催:
金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]