コレクション

金沢21世紀美術館は「新しい文化の創造」と「新たなまちの賑わいの創出」を目的に、2004年10月に開館しました。文化的所産を調査研究した成果をもとにした収集、保存、展示公開という美術館本来の機能においても、現在に座標軸を置いた美術館活動を展開し、伝統文化に刺激を与え、新しい文化創造に寄与することを目指しています。美術館のコレクションの構築は美術館の基幹を成す重要な活動のひとつとして位置づけられ、美術館設立準備の2000年から18年間にわたりたゆみなく続けられてきました。作品を通して世界の「現在(いま)」を伝えるべく、次の3つの収集方針の下、独自の視点で形成された体系的なコレクションを目指し、今後とも収集事業を充実させていきます。

収集方針について

  • 1.1980年以降に制作された新しい
    価値観を提案するような作品
  • 2.1900年以降に制作され、1980年以降の作品の歴史的参照点となるような作品
  • 3.金沢ゆかりの作家による新たな創造性に富む作品

新しい価値観を示す

美術館の目指すところに示されるように、現在に座標軸を置いた美術館として、そのコレクションにおいても現代の美術の状況と密接に関わる作品が核となるように心がけてきました。 折しも20世紀から21世紀へ架橋する時代に準備・開館を迎え、その時々の現在にまなざしを向けたとき、畢竟価値観の転換期に向き合うことも要請されたのです。 同時代に影響を受けた作家・作品とは、1980年代から見られたモダニズムの変容と1990年代以降の全地球規模に起きた急速なグローバリズムへの回答でもあります。さらには、イズムや派閥の名で代表される1970年代までの美術史と異なる1980年代以降の多様な価値観を位置づけるために、作家作品の考察から帰納的に次の6つのキーワードを得て収集における指針としてきました。これまで周縁と位置づけられてきた地域においては、モダニズムを基盤とした表現の発見があり、境界を越える人々による異文化間の移動と横断、インターネットによる新しい空間の創出と情報化を示す非物質性、 専門領域やジャンルを越えた新しいコミュニケーションの回路を開く協働・参加、生物工学の発達や環境との相互関係から生じた生命や身体への関心の高まりに端を発する生成・生体、冷戦を境にした大きな物語の終焉がもたらした日常へのまなざしと他者への観察が社会的な課題への気づきや解決になるとした日常性と個別性、蓄積された過去の情報からの引用や複製によって新しい組み合わせや異なる価値の創出など、同時代の美術の考察は美術の状況だけでなく、時代の特徴をそのまま指し示すものでもありました。また、この指針を定めた収集開始時から今日に至るまで、国内外で時代の転換点にもなりうる大きな出来事が起きています。1980年以降の時代についても、絶えず指針を見直し、現在から過去を振り返った時に、どの作品をもって時代を語るのかという歴史構築の視点はますます重要になるものと考えられます。

歴史的参照点について

1980年以降の作品を考察するにあたり、美術史上の先行例として、とりわけ影響が強く、 関係性が深い1900年以降の作品を歴史的参照点にあたるものと捉えてコレクションに加えています。とりわけコンセプチュアル、ポップ、ミニマルといった芸術運動や、インスタレーション、パフォーマンス、参加などのキーワードは1980年以降の作品においても随所に見られ、大きな影響が認められます。また、時代を逆照射するかのように1900年代以降の作品については近年再評価が高まり、新たな理解や共 感と関心を集める事例もあります。2006年に受贈した2,800件以上にのぼる粟津潔作品のコレクションについても、美術のみならず、デザインや建築の分野における影響を探るうえでも重要なコレクションの一部となっています。

金沢ゆかりの作品について

金沢ゆかりの作品は、金沢生まれあるいは金沢在住の作家による、優れてコレクションに相応しいものを視野に入れて収集を進めてきました。特に金沢市が文化行政の重要な施策のひとつとして位置づける工芸については、現代美術との混淆によって新たな境地が開くことも期待されています。素材に自覚的で前衛的な試みに意欲的な作家、金沢美術工芸大学や金沢卯辰山工芸工房での研鑽を積んだ作家などを取り上げることは、土地が育む文化の影響を受けた作家のアイデンティティを尊重し、歴史と伝統を重んじて革新に繋げようという金沢の文化に対する態度でもあります。金沢21世紀美術館が歴史的理解や未来に向けての議論のプラットホームとなり、ジャンルを越えた新たな創造性に富む作品の検証を通して、コレクションの価値の創成に繋げていくべきものと考えています。