ソフィ・カルは、作品においてアイデンティティの形成、記憶、そして認識といった問題を探求している。《ヴェネツィア組曲》は見知らぬ男をパリからヴェネツィアまで追いかけて、13日間尾行する出来事を写真と文章で物語るという作品である。作品は個人的な好奇心からゲームとして始まる。彼女は孤独であったため、パリの町中で人を尾行した。この男がヴェネツィアへ向かおうとしていることを知ったとき、彼女は彼についていく。写真によるドキュメントの手法を用いて、カルは個人的な時間や交流に焦点を当て、現代を生きる人間のアイデンティティに、極めて親密なアプローチを試みている。

(1953年パリ生まれ、同地在住)