ミニマリズムの主唱者の一人であったダン・フレイヴィンは、蛍光灯を用いる作品でよく知られ、純粋な光を用いる作品制作を通して、伝統的な芸術の概念へ挑戦した。フレイヴィンの作品は、絵画と彫刻の狭間のあいまいな領域に位置する。彼の選択する素材が持つ固有の流動性は、線や色といった絵画的な要素の探求を可能とし、同時に、作品の持つ物質性は空間性を生み出す。出品作の《無題 (ダナへ) 6》は、フレイヴィンが建築空間も取り込んだ作品の一例である。ごくありふれた蛍光灯は、現代の工業的社会の象徴であると同時に、一方で空間、色、線といった造形要素を混乱させる存在である。また、フレイヴィンの光への関心は、西洋絵画史に由来し、精神性の暗喩としての超越した存在をも示唆している。

(1933年ジャマイカ / ニューヨーク州)生まれ、1996年リバーヘッド/ニューヨーク州にて没)