コレクション展2 歴史、再生、そして未来

2015年11月28日(土) - 2016年5月8日(日)

本年度のコレクション展Ⅰは、私たちにとっての「いま」を問いかける機会としました。それに続くコレクション展Ⅱは、近年新たに収集された作品の紹介とともに、既存のコレクションを再解釈することによって私たちの「未来」を考察する展覧会です。様々な国において、また国内の諸地域においても社会的な価値観が短期間で変化してゆく21世紀のなかで、現代美術はどのような可能性を持つのでしょうか。「歴史」や「再生」というテーマのもと、これからの私たちがたどる道程を皆さんと共に想像する機会となれば幸いです。
また昨年に続き、「粟津潔、マクリヒロゲル2」も同時開催します。今年度のタイトルは「グラフィックからヴィジュアルヘ:粟津潔の視覚伝達論」。1955年の第5回日本宣伝美術(日宣美)展にて《海を返せ》で日宣美受賞以降の日宣美展の出品作品ほか、1960年代の粟津潔のグラフィック及び表現を紹介します。

廣村正彰「金沢でJunglin'」おぼろげ

2015年11月21日(土) - 2016年5月8日(日)

デザインという言葉に含まれる「美」と「思考」が様々な問題解決の糸口を与えてくれます。それはデザインのすべきことをさらに拡張していき、デザイン自体のフィールドを大きく広げているのです。周辺から本質を見ると未来が見えてくる−デザイナー廣村正彰がデザインワークの思考プロセスで金沢の風景を読み解き、金沢21世紀美術館デザインギャラリー空間で新作を展開します。

2010年より始まった、デザイナー廣村正彰による映像インスタレーションのプロジェクト「Junglin’ジュングリン」。本展では新作「おぼろげ」を展示します。「知っている」と思っていた風景は、視点の少しの変化で簡単におぼろげなイメージになってしまいます。しかし、そのおぼろげな風景は、絵葉書の写真のような記号的なイメージからは遠く離れ、その場所の原始的な姿を見せてくれます。私たちが普段どのように風景を見ているのか、また見落としているのか、本作品を通して体験してください。

廣村正彰「金沢でJunglin’」おぼろげ

ザ・コンテンポラリー3

Ghost in the Cell:細胞の中の幽霊

2015年9月19日(土) - 2016年3月21日(月)

情報に生命は宿るかーバイオテクノロジーとアートの融合

新しい技術が普及した近未来の問題を題材にした作品で国際的な議論を巻き起こしてきたアーティストユニットBCLが、現在の日本のポップカルチャーの代表格としてインターネット上で世界的な人気を誇る歌声合成ソフト「初音ミク」に遺伝子と細胞を与え、生命/非生命の境界、そして二次創作や芸能/芸術のはざまで育まれる現代日本の特異な想像力の可能性を探究します。

BCL + Semitransparent Design 《Ghost in the Cell》 2015
© Crypton Future Media, INC.

アペルト02

樫尾聡美 生命の内側にひそむもの

2015年9月19日(土) - 2016年1月17日(日)

本展「樫尾聡美 生命の内側にひそむもの」は、今まさに興りつつある新しい動向に目を向けて、新進気鋭の若手作家を個展形式で紹介するシリーズ「アペルト」の第2回目です。
樫尾聡美は、加賀友禅をはじめとする染色の伝統をふまえながら、刷毛による色挿しやシルクスクリーン等の技法による、繊細で精密な表現をおこなっています。飛行機や電車など日常的なモチーフを取り入れた、幾何学的な装飾を特徴とする作品のイメージは、生命の細胞をも連想させ、布を多層に重ね合わせた立体的なフォルムは、有機的で生命力溢れる姿で現れています。
本展では、樫尾が2014年より展開している展示空間に合わせた天井吊りの作品を紹介します。

内呂博之(金沢21世紀美術館 コンサベーター/キュレーター)

《あたふる》 2014(部分)

ザ・コンテンポラリー2

誰が世界を翻訳するのか

2015年9月19日(土) - 2015年12月13日(日)

2015年度の金沢21世紀美術館展覧会事業は、「ザ・コンテンポラリー」と題し、今日の世界を照射する現代美術の作品について考察しています。
春・夏の「ザ・コンテンポラリー1 われらの時代:ポスト工業化社会の美術」では、日本の美術の現在を知るうえで重要と考える「関係性」「日常」「メディア」「ヴァナキュラー」の4つのキーワードを手がかりに、特に2000年以降に活躍が目覚ましい作家10組による作品を紹介しました。

続く秋・冬の「ザ・コンテンポラリー2 誰が世界を翻訳するのか」は、異なる文化に立脚した現代美術作家たちが、自らが属する共同体を取り巻く世界の有り様をどのように捉え、伝えていこうとしているのか、特に異文化間を「移動」「横断」していくことが常態化している現代社会においては、あらゆる関係が流動的であり、これまでに描かれた歴史や価値観も、誰がそれを伝えるのかによって、さまざまな意味を浮き彫りにします。本展は特に周縁地域から爆発的に生まれ続ける多様な作品を生への「実践」と捉え、私たちと同じ時代に別々の場所で別々の時間を生きる人々が、世界をどのように見ているのかについて、考えていきます。

 美術の領域に現れる作品は、「ABC」や「あいうえお」といった決まった記号(コード)による表現とは異なり、さまざまな素材や方法を自由に組み合わせることで、曖昧でユニークな表現を可能にしています。ひとつの作品は作り手から発せられる言葉や振る舞いであり、個人的なことであれ共同体のことであれ、作り手が、自身を取り巻く世界をどのように認識しているかの表れだといえるでしょう。では文化的背景が異なる土壌から生まれる表現について、私たちはどのようにアプローチすべきなのでしょうか。特に20世紀後半までの西欧中心史観が見直されたポスト・コロニアル批評を経た現在、多くの表現者が西欧によって翻訳された言葉や振る舞いでなく、自らの言語で正当に理解されるための翻訳行為を取り戻そうとしています。また、たえず多方向から押し寄せる表現が異文化間の混交によってあらたな意味を持つとしたら、誰がそれを翻訳するのかで大きく意味を変えてしまうことに注意を払う必要があります。見る者との間に共感関係を創出する展覧会という創造の場において、異なる視点に立つ表現を捉え、文化(作品)が世界を翻訳することを見届ける試みとなることを目指すものです。

金沢21世紀美術館 チーフ・キュレーター 黒澤浩美

※本展展覧会名は同名の書籍「だれが世界を翻訳するのか」真島一郎(編著)人文書院、2005年 に借りたものです。

El Anatsui《Broken Bridge》 2012
※参考図版(この作品は出品されません)