モニーク・フリードマン展

2011年11月23日(水) - 2012年3月20日(火)

フランスを代表する女性作家のひとり、モニーク・フリードマンの本格的な個展を金沢21世紀美術館で開催します。マティス美術館(フランス)やエルメス財団ラ・ヴェリエール(ベルギー)、パサージュ・ドゥ・レッス(フランス)を始めとする各地での個展や、ポンピドゥ・センター(フランス)による「彼女たち@ポンピドゥ・センター」展への参加などにより、高い評価を確立しているフリードマンを、日本のみならずアジアの美術館として初めて紹介します。

1970年代終わりから作家活動を開始したフリードマンは絵画制作を中心に据え、色と光の表現をカンヴァス、顔料、パステル、紐、紙などの素材を用いて追求してきました。自身の身体と素材との親密で双方向的なダイアローグの中で浮かび上がっていく色やイメージには、時には作家自身も気がつかなかった自らのルーツや過去の記憶の断片が表出し、我々ひとりひとりの記憶や心をも揺さぶります。

近年では、ガラスやプレキシグラス、紙や布などを用いたサイトスペシフィックなインスタレーションも手がけているフリードマン。作家のこれまでの代表作から、当館の建築空間との対話で生まれた新作インスタレーションまで、計13点の作品を展示します。明るく白に満ちた当館の空間に、フリードマンは独自の色と光を放ち、我々の心と空間に不思議な余韻を残すことでしょう。

押忍!手芸部 と 豊嶋秀樹『自画大絶賛(仮)』

2011年11月23日(水) - 2012年3月20日(火)

効率や分かりやすさを優先する現代社会のなかで、自由であるはずの創作活動にまで、私たちはマニュアルを求めていないでしょうか。つくること、つくるものに対して理由や評価の基準を求めていないでしょうか。高度な技術をもつ「部長」石澤彰一が、手芸の経験や技術をもたない「男前部員」と結成した「押忍!手芸部」は、「不器用上等!」を宣言し、技術やルールより、個人のつくりたい気持ちやつくる楽しさを尊重する活動を続けてきました。7人の部員を中心としたユーモアあふれる伸びやかな部活動は、ものづくりに当たり前のように横たわる既成概念を、鮮やかに覆してみせます。

デザイン、アート、音楽、イベントプロデュースなどジャンル横断的な活動で注目されるアーティスト、豊嶋秀樹は、人や場との出会いを表現の出発点とし、モノや人、場との関係から、次々と新たな出来事を作り出してきました。従来の枠組に収まらない多様な活動は、媒介者でもあり表現者でもある豊嶋独自の視点で組み立てられています。

本展では、「押忍!手芸部」と豊嶋秀樹が初めて出会います。豊嶋は「押忍!手芸部」の精神を読み解いて展示空間を構成し、「押忍!手芸部」はその空間で部活動を展開します。

ベトナム絹絵画家グエン・ファン・チャン 絵画修復プロジェクト展

2011年10月22日(土) - 2012年2月12日(日)

グエン・ファン・チャンはベトナムが誇る近代絹絵のパイオニアとして知られる画家です。「ベトナム絹絵画家グエン・ファン・チャン 絵画修復プロジェクト展」では、彼が家族のもとに遺した作品3点が日本の多くの有志の熱い思いによって修復されるまでを紹介します。グエン・ファン・チャンの絹絵は、絹地に水彩で描かれ、何度も画面を洗浄しながら描くというその独特の手法ゆえ、温湿度や光の影響を受けやすく、高温多湿の本国では傷みの進行が懸念されていました。今回修復が試みられた3点を初公開するとともに、3年に渡る困難な修復への道程を綴るドキュメンタリー映像によって、ベトナムを愛する日本の民間の人々の力で成し遂げられた偉業をお伝えします。

サイレント・エコー コレクション展 II

2011年9月17日(土) - 2012年4月8日(日)

「どうしたというのだろう?音楽はためらうように、うねりながらはじまった。散策か行進のように。夜の世界を歩む神のように。ミックの外の世界はにわかに凍りつき、音楽のあのすべり出しの部分だけが、胸の中で赤く燃えていた。そのあとの音楽は耳にもはいらず、彼女はただ拳を固く握りしめ、凍りついたようにすわったまま待ち受けていた。しばらくすると、音楽はふたたびはげしく、声高にうたいだした。もはや神とは何の関係もなかった。これこそミックであり、昼日中を歩むミック、夜をただひとり歩くミック・ ケリーだった。・・・この音楽は彼女であり、ほんとうの、ありのままのミック自身であった。」(1)

カーソン・マッカラーズの小説「心は孤独な狩人」で語られる音楽観、人と音楽の世界と深く共鳴し合うルクセンブルグ出身のツェ・スーメイの《エコー》《ヤドリギ楽譜》を軸として、「サイレント・エコー コレクション展II 」では、当館コレクションの潜在する未だ語られたことのない世界の展観を試みる。

《エコー》《ヤドリギ楽譜》で提示される、身体、音、技術、自己をとりまくあらゆる事象との関わりや融合から生み出される世界を根底に据え、こうした音楽観を出発点に、かたちが造形芸術である所以も同様に自 己、技術、対象の十全な融合によってこそ作り出される造形芸術の世界を紹介する。この試みは、「工芸的造形」という概念をめぐって近年展開されている視座を起点としている。「素材/自然/環境/他者に寄り添い、自らを物事の生成のプロセスに投げ入れ、親密な交流を図ることによって、固有の技術を見いだしつつ新しいかたちを生み出す造形及び造形行為」(2) という美術表現を評価する新しい眼差しに依り、ツェ・スーメイ、アニッシュ・カプーア、粟津潔、山崎つる子、久世建二、角永和夫による、自己、他者、素材といったあらゆるものとの対話の営みを検証する。 彼らの作品にみる静かな対話や共鳴の様相は、人がこの世界とどのように関わり、生きるかという人間の存在性について物語り、どんなに困難な時代においても新たな可能性、希望を我々に示し続けるだろう。

(1) カーソン・マッカラーズ、河野一郎訳『心は孤独な狩人』新潮社、1972年、pp147-148
(2) 不動美里「生成のプロセスの只中にあるもの」『オルタナティブ・パラダイス〜もうひとつの楽園』金沢21世紀美術館、2005年、pp.8-11。近年の工芸的造形論の展開については、村田大輔「ロン・ミュエック- 対話というかたち」(『ロン・ミュ エック』フォイル、2008年)、「反重力構造 ‒「歴史の歴史」というかたち」(『杉本博司 ‒ 歴史の歴史』新素材研究所、 2008年)、「“ニットカフェ・イン・マイルーム”というかたち」(『広瀬光治と西山美なコの“ニットカフェ・イン・マイルーム”』金沢21世紀美術館、2009年)、「What would Hiroshi Sugimoto Do? What would Museums do? Deified Artist and Museum Hiroshi Sugimoto’s“History of History”」(AAS-ISS Joint Conference,2011年、 https://www.asian-studies.org/Conference/index.htm)を参照されたい。

ピーター・マクドナルド: 訪問者

2011年4月16日(土) - 2012年3月20日(火)

「金沢若者夢チャレンジ・アートプログラム:美術館はメディエーター」

今年度の「金沢若者夢チャレンジ・アートプログラム」(*1)では初の試みとして海外のアーティストに着目。イギリス在住の若手アーティストで世界が注目するピーター・マクドナルドを招聘し、アート・プロジェクトを展開します。「描くこと」を通じて、人と関わり、ジャンル、ジェンダー、国境、日常と非日常、といった境界を軽やかに超えてゆくマクドナルドを核とし、メンバー(*2)が彼の活動に参画することによって、コミュニケーションの多様性と可能性を体験します。館内での絵画作品展示(長期インスタレーションルーム)と壁画インスタレーション制作(展示室13)に始まり、一年を通してこれらの空間を舞台に様々なプログラムを随時併催します。マクドナルドと若者たちが金沢の町や人と交流しながら、作家の絵画世界が町のなかに徐々に浸透し、絵画という根源的な表現言語を通じて、人と人、人と場がしなやかにつながることを目指します。

*1
スウェーデンのストックホルム近代美術館の「ゾーン・モデルナ」の方法論を導入し、平成19(2007)年に立ち上げた金沢21世紀美術館の独自のプログラム。18~39歳の若者を主要な対象とし、アーティスト・イン・レジデンス、ワーク・イン・プログレス、ワークショップを組み込んだ長期プロジェクト型の展覧会。プログラム参加者は、共同作業を通じて、自己像や世界像を再発見し成長していく。過去4回の国内での成果を踏まえ、平成23年度より当館の美術館活動のキー概念「美術館はメディエーター」を集大成するモデルケースとして本事業を展開する。

*2
メンバー:
壁画制作メンバー(活動期間:4/20〜6/5):9名
プロジェクト・メンバー(活動期間:6/5〜2012/3月末):12名