期間:
2025年9月27日(土) - 2026年1月18日(日)
前期展示:~11月16日(日) 後期展示:11月18日(火)~
2025年9月27日(土) - 2026年1月18日(日)
前期展示:~11月16日(日) 後期展示:11月18日(火)~
金沢21世紀美術館
展示室1〜6
一般 450円(360円)
大学生 310円(240円)
小中高生 無料
65歳以上の方 360円
※( )内は団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで
月曜日(ただし10月13日、10月27日、11月3日、11月24日、1月12日は開場)10月14日、10月28日、11月4日、11月25日、12月30日〜1月1日、1月13日
美術奨励の日:
会期中の毎月第2土曜日(10月11日、11月8日、12月13日、1月10日)
市民美術の日 オープンまるびぃ 2025:
11月3日
金沢市民の方は本展を無料でご覧いただけます。本人確認書類(免許証・保険証・住民票など住所の確認できる公的書類)を総合案内でご提示ください。
本展は現代アート作品における文字の表れを切り口に、当館のコレクション作品をご紹介します。
わたしたちの日常生活には、様々な文字が溢れています。今読んでくださっているこの文章も文字で書かれていますが、メールやSNS、本、看板、ポスター、映像字幕など、わたしたちが普段文字を目にしたり、読んだり、書いたり、打ったりする機会は枚挙にいとまがありません。情報伝達の手段としてわたしたちの生活に溶け込んだ文字ですが、文字そのものの存在や意匠、機能を考えてみる機会は案外少ないのではないでしょうか。
文字が通常、情報やメッセージを伝えるために用いられるように、アートにおいても、文字があることで新たな意味が浮上し、思考が深まり想像が膨らむような作品が多くあります。一方で、文字は万能ではありません。むしろ文字によって作品の意味が撹乱され、安易な意味付けが阻まれる場合もあります。
さらに、文字の様相に着目することで、書く(描く)/読むといった、文字をめぐる行為やその身体性が透けて見えてくる作品もあります。文字を取り巻く身体性に改めて目を留めることは、デジタルデバイス上で文字を扱うことが日常化した現代において重要な視座になるでしょう。
本展で取り上げる作品は、絵画、版画、ポスター、書、陶、映像、インスタレーションなど、幅広い表現形式にわたりますが、そのほとんど全てに文字が組み込まれています。なぜこの作品にあえて文字が使われたのか、どうしてこの文字を選択したのか、なぜこのようなかたちで表現されているのか、文字があることでいかなる作用が生まれているのか──。こうした視点から文字に注目して作品を見つめ直すことで、新しい解釈の可能性が拓かれます。そしてまた、文字を手がかりに金沢21世紀美術館のコレクション作品を鑑賞することを通じて、SNS時代におけるわたしたちの文字との関わりかたを見つめ直す機会にもなるでしょう。文字を用いた表現の魅力と奥深さをじっくりと味わってみてください。
日時:2025年12月7日(日)14:00〜15:30
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール(予定)
料金:無料、予約優先
日時:2025年10月19日(日)、11月16日(日)、12月14日(日)、2026年1月11日(日)
14:00〜14:45
集合場所:金沢21世紀美術館 チケットカウンターの裏
料金:参加無料(要コレクション展2チケット)、予約不要
日時:2025年11月29日(土) 14:00〜14:45
集合場所:金沢21世紀美術館 チケットカウンターの裏
料金:無料(要コレクション展2チケット)、予約不要
日時:2025年11月23日(日)14:00〜15:30(13:30開場)
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
料金:参加無料、予約優先
セシル・アンドリュ Cécile ANDRIEU
粟津潔 AWAZU Kiyoshi
マルセル・ブロータース Marcel BROODTHAERS
ギムホンソック Gimhongsok
シルパ・グプタ Shilpa GUPTA
井上有一 INOUE Yuichi
泉太郎 IZUMI Taro
柿沼康二 KAKINUMA Koji
北出不二雄 KITADE Fujio
ジョセフ・コスース Joseph KOSUTH
中村錦平 NAKAMURA Kimpei
邱志杰(チウ・ジージエ) QIU Zhijie
サイトウ・マコト SAITO Makoto
塩見允枝子 SHIOMI Mieko
ルパート・スパイラ Rupert SPIRA
横尾忠則 YOKOO Tadanori
展示作家:
粟津潔(1929年東京都生まれ、2009年神奈川県にて逝去)
当館のコレクション作品の実に半数以上を占めるのが、戦後日本のグラフィックデザインを牽引した粟津潔による作品群です。粟津は、文字や活字の持つ美しさに注目し、多様な文字表現を試みます。2000年前後になると古代中国の象形文字の書写に熱中し、絵や符号から生まれた文字のかたちに、現代の美術やデザインに繋がるデザイン性を見出しています。文字そのものから立ち上がってくるイメージをお楽しみください。
展示作家:
井上有一(1916年東京都生まれ、1985年神奈川県にて逝去)
泉太郎(1976年奈良県生まれ、東京都在住)
北出不二雄(1919年兵庫県生まれ、2014年石川県にて逝去)
中村錦平(1935年石川県金沢市生まれ、東京都在住)
サイトウ・マコト(1952年福岡県生まれ、東京都在住)
文字の筆致やデザインは、文字そのものの持つ意味と合わさり、見るわたしたちになんらかの感触をもたらすことがあります。井上有一の《風》の書からは、室内にいながらにして、吹き抜ける風そのものが感じられるかのようです。一方、泉太郎の映像作品《古い名前、先客》では、アルファベットを象った鉄の容器に入れられたうなぎの生々しい動きが、「so mean」の文字(「意地悪」の意)とあいまって、名状しがたい心地の悪さを喚起するかもしれません。走る文字、浮遊する文字、うごめく文字──それぞれの作品に表れた文字から、どんなリズムが感じられるでしょうか。
展示作家:
横尾忠則(1936年兵庫県生まれ、東京都在住)
《What's yours is mine. What's mine is mine.》は、横尾忠則が2009年に当館で個展を開催した際に、当館の恒久展示作品《スイミング・プール》(レアンドロ・エルリッヒ作)から着想し、公開制作で描いた作品です。「君のものは僕のもの、僕のものは僕のもの」を意味する英文の文字が反転し、水面に映ったように表れています。水面に映る虚像は、物質的な実体をもたない言葉の、存在しないはずの実像を想像させます。存在と不在、現実と虚構の狭間で揺らぐ世界と、そこに表れた文字の意味を考えさせられます。
展示作家:
セシル・アンドリュ(1956年アルデンヌ(フランス)生まれ、石川県金沢市在住)
マルセル・ブロータース(1924年サン=ジル(ベルギー)生まれ、1976年ケルン(ドイツ)にて逝去)
ギムホンソック(1964年韓国ソウル生まれ、同地在住)
ジョセフ・コスース(1945年米国トレド生まれ、ニューヨーク及びヴェネツィア(イタリア)在住)
塩見允枝子(1938年岡山県生まれ、大阪府在住)
ルパート・スパイラ(1960年英国ロンドン生まれ、オックスフォード在住)
文字はその読解可能性/不可能性の間を行き来しながらわたしたちの前に現れます。マルセル・ブロータースの《ミュージアム-ミュージアム》やギムホンソックの《パブリック・ブランク(金沢バージョン)》は、作品上の文字を読むことを通して、ユーモアに溢れた表現の中から鋭い批評性が立ち上がってきます。一方で、一見しただけでは文字の意味付けが困難な作品や、文字が物理的に「読めない」場合もあります。キリスト教における定時課のように毎日決めた時間に6冊の本を読み、読んだ文字を修正液で塗りつぶす営みの結果生まれたセシル・アンドリュの《定時課》や、自作の詩が瞑想的にぎっしりと刻まれたルパート・スパイラの《詩の器》には、文字をめぐる身体の痕跡が反映され、わたしたちの文字との向き合いかたを再考させます。
文字とゆっくり向き合い、反芻しながら、思索や想像に浸ってみてください。
展示作家:
邱志杰(チウ・ジージエ)(1969年中国福建省生まれ、北京在住)
シルパ・グプタ(1976年ムンバイ(インド)生まれ、同地在住)
一字一石とは、仏教で石に1文字ずつ経典を写経したもののことですが、邱志杰の《一字一石・成敗》は、梁啓超(りょうけいちょう)(1873–1929)の書いた「自由書」のうち「論成敗」の文章より一文字から四文字ずつが石に篆刻された作品です。「論成敗」は、清での改革運動ののち日本に亡命し言論運動を行った梁が大事に対する覚悟を記した文章ですが、それが一文字から四文字ずつに分解され、新たに組み合わさることで、元の文脈を超えた新たな意味が空間に広がります。
カシミール地方の領有権をめぐるインド・パキスタン間の衝突を幼少時から間近に感じてきたシルパ・グプタの作品は、「ここに境界はない」という一文が書かれたテープで構成されています。どこかに1本貼るだけで境界線になりえてしまうテープを用いて紡がれる物語には、人々の分断を超越して存在する世界の姿が表れています。
展示作家:
柿沼康二(1970年栃木県生まれ、東京都在住)、粟津潔
「不死鳥」という永遠なる大きな存在を、書き直しの利かない一回きりの瞬間において捉え、まさしく全身全霊で挑んだ柿沼康二の書。炎の中で死して蘇る不死鳥の姿が、限界まで高めた書表現によって、圧倒的なスケールで現前します。
それに向かい合うように展示されるのは、「E」の文字を使った粟津潔の作品群です。「E」は、地球(Earth)、環境(Environment)、エネルギー(Energy)、終焉(End)など、「E」を用いた様々な言葉の意味が込められた文字であり、21世紀を生きる赤ん坊として構想された「H2O Earthman」(アースマン)のキャラクターと合わせて、現代を生き抜くためのスローガンとして提示されます。
大空を舞う永遠の(Eternal)不死鳥と、時に運命に流されながらも大地(Earth)を踏みしめて歩む、有限の人間。それぞれの作品の文字表現からは、わたしたちがどう生きていくべきかという人生哲学が見えてきます。
金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]
北國新聞社