ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス

2010年9月18日(土) - 2010年12月25日(土)

インフォメーション

期間:

2010年9月18日(土) - 2010年12月25日(土)
10:00〜18:00 (金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館

休場日:

月曜日(9月20日、10月11日、11月22日は開場)、9月21日、10月12日、11月24日

料金:

<当日>
一般=1,000円
大学生・65歳以上=800円
小中高校生=400円

<前売・団体>
一般=800円
大学生=600円
小中高校生=300円

前売りチケット取扱:

チケットぴあ TEL 0570-02-9999
チケットPコード:764-308

ローソンチケット TEL 0570-000-777
チケットLコード:56631

ともに8月18日(水)より発売を開始します。

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館
TEL 076-220-2800

光と色が移ろいゆく果てしないトンネルの行程。ネズミとクマは街に繰り出し、芸術や哲学を通して人間社会の不条理を見つめる。身の回りの物たちは危ういバランスを保ち佇む。即興的な連鎖反応を繰り返しながら、一つのガラクタからもう一つのガラクタへと辛うじて伝わるエネルギー。約90点の粘土が象る大小様々なこの世の出来事が織りなすパノラマの傍らには、世界各地の空港の風景が浮遊する。人生や世界について誰もがふと思い浮かべそうな問いが現れては消え、止むことなく空中を漂う。小さなモノクロ写真にはおとぎ話のような光景が黒く柔らかな輪郭で映る。平穏で何気ない日常は、驚異と混沌、悲劇と喜劇、憂鬱と虚無に満ちている・・・

ペーター・フィッシュリとダヴィッド・ヴァイスは写真、立体、映像など様々なメディアを柔軟に操り、身近な光景や事物に真摯な眼差しを向け、意味のずれや解釈の多様さを綿密な計画と偶然性によって提示し、皮肉とユーモアを織り交ぜながら人間社会の本質を浮き彫りにします。独自の美学に貫かれた彼らの表現の妙と百科全書的世界をお楽しみください。

Image:The Least Resistance 1980-81 film still camera: Jürg V. Walther 

関連プログラム

学芸員によるギャラリー・トーク

[日時]10月22日(金)18:30 ~19:30 *終了しました
    11月27日(土)16:00 ~17:00
    12月23日(木・祝)15:00 ~16:00
[集合場所] 金沢21世紀美術館 レクチャーホール
[料金] 無料(ただし、当日の本展観覧券が必要)

絵本を読もう

[日時]11月3日(水)14:00〜(約30分)*終了しました
    12月4日(土)14:00〜(約30分)
[集合場所]金沢21世紀美術館 授乳室前
[料金]無料
[対象]子どもから大人まで *小さなお子さんは保護者の方とご参加ください

展示作品・シリーズ紹介

  • ポスター
    H149.8 x W103 cm

    《より良く働くために》

    ある会社に掲げられていた働くための心構えの10箇条。限定された場所と目的から解放され、紙上にレイアウトされ貼られることにより、「人の話をきくこと(LEARN TO LISTEN)」「笑顔で(SMILE)」といった言葉の持つ意味はより普遍性を帯び、観る者一人一人の心に響く。

  • ヴィデオ 60分10秒
    ヴィデオ・スチル

    《パラッツォ・リッタでのカナルヴィデオ》

    観る者を無意識の領域に導くかのように延々と映し出されるトンネル。時に赤や黄色、そして白光に包まれる幻想的世界。実際は、チューリヒの下水管。

  • ヴィデオ 6分
    ヴィデオ・スチル

    《子猫》

    子猫が皿のミルクをひたすらなめている。途中、ふと皿から顔を上げ、しばらく正面をじっと見つめるが、また皿に戻り、ミルクを飲むという行為にふける。日常の風景が切り離され、展示台の上のテレビモニターで再現される作品。

  • 16ミリフィルム 30分
    フィルム・スチル
    camera: Jürg V. Walther

    ネズミとクマ

    フィッシュリとヴァイスの活動の初期から「ネズミ」と「クマ」は登場する。最初の映像作品《ゆずれない事》(1980-81)で、ネズミとクマは芸術でひと儲けを企むが殺人事件に巻き込まれる。さんざんな目に遭いながら、ネズミとクマは社会システムを独自に解読し始める。続く作品《正しい方向》(1982-83)での彼らは、知性と野心を備え、自然界で生きる術を模索する。この2作品に登場した大きなネズミとクマは今、キャビネットの中に陳列される。小さなネズミとクマは、バロック様式の宮殿や日本庭園を巡る。天井からつり下げられ空中を浮遊するネズミとクマはカラフルな光と煙の奥へと消える。
    1980年代前半の映像作品ではフィッシュリがネズミ、ヴァイスがクマ(実際はパンダ)に扮した。アーティストの分身とも見受けられるこの「ネズミ」と「クマ」は、冊子の中にも、立体作品としても現れる。近作に登場する小柄なネズミとクマは、別次元からやって来て、この世界を探っているかのようでもある。「ネズミ」と「クマ」の存在は作品ごとにますます複雑化している。

  • ポリウレタン、布、彩色
    H50 x W70 x D87 cm

    「グレイ・スカルプチャー」

    「グレイ・スカルプチャー」はポリウレタンを用いて形作られた彫刻。《家具付きアパート》、《管》、《平衡器官》は全て内部空間を意識した作品である。作品《動物》は、種類を特定できない、抽象的な動物の概念を示している。目、耳など体に開けられた穴は、内部空間への窓である。

  • 写真

    「均衡」

    タイヤ、椅子、靴、ブラシ、フォーク、キッチン用品などが危うげなバランスでたたずむ。本シリーズは、静止状態を保つことのできない形を写真に留めることにより「つかの間の彫刻」として永続性を持たせている。重力とバランスにより危うく立つ姿が、観る者の感情をゆさぶる。各作品には、《ピラミッドの秘密》、《無法者》などのタイトルがつき、物語性が強い。

  • 16ミリフィルム 30分
    フィルム・スチル

    《事の次第》 《事の成り立ち》

    「均衡」シリーズの制作から着想を得た作品。ゴミ袋、タイヤ、梯子、ペットボトルなどの空の容器、風船、椅子、モップ、車輪のついた簡素なオブジェ—— 重力、遠心力、水力、化学変化によって引き起こされる発泡、煙、火等によりドミノ倒しのように、次から次へとエネルギーを伝えていく。現象のみで紡がれた物語には人の気配は一切排除され、あたかもガラクタひとつひとつが能動的にひとつの方向に向かってエネルギーを伝えようとしているかのようである。
    《事の成り立ち》は、《事の次第》の制作にあたり、このエネルギーのつながり一つ一つをフィッシュリとヴァイスが綿密に、時間をかけて創作する姿を捉えたドキュメント映像である。

  • フラッシュライト、ターンテーブル、プラスチック製のコップ、接着テープ
    H16 x W25 x D40 cm

    《音と光 − 緑の光線》

    ディスプレイ用のターンテーブル、使い捨てのプラスチック製のコップ、野外携
    帯用のランプといった既製品の組み合わせによる機械仕掛けの彫刻。ターンテーブル上のコップに光が当てられ、その回転により、不規則に変化し続ける光のムーヴィング・イメージが立ち現れる。

  • 参考写真
    [制作中のコンクリート・ランドスケープ]

    《無題( コンクリート・ ランドスケープ)》

    「風景をどのようにして表現するか」という取り組みのひとつ。コンクリートと手作業で成形された「風景画」は、雨、光を受けることで、それ自体が自然界の現象そのものをも映し出す風景となる。

  • Cプリント
    各H160 x W225 cm

    《エアポート》

    1987年以降、世界各地を移動する中、空港を撮影した作品。現在も進行して
    いるプロジェクト。異なる文化圏にありながらも共通に機能する空港の均質
    さ、飛行機から垣間見える各国のアイデンティティ、夜の光、雨のしずく、窓越しに見る空港の情景の豊かさが映し出されている。

  • 参考写真《よくある逆さま語:内と外》(《不意に目の前が開けて》より)
    1981 粘土
    Collection Emmanuel Hoffman Foundation

    《不意に目の前が開けて》

    おとぎ話、テクノロジー、近代化、スポーツ、映画、聖書、自然、エンターテイメント、作家個人の生活の一場面—— 人類そして地球の歴史上の様々な出来事を粘土で再現した作品群。細部まで丁寧に作られたものから荒くスケッチのよう
    に留められた像約90点は想像のイメージを形にしている。アーティストの主観が生み出したこの世の出来事が織りなすパノラマは、作家が最初に想定したタイトルの「the world we live in(私たちが住む世界)」から読み取れるように、
    この世の大小様々な事柄から「生きること」を問う。本作品は、1981年に約200点のオブジェから成るインスタレーションとして発表された後、2006年に約90点からなるヴァージョンとして新たに発表された。本展覧会では新しい
    ヴァージョンが展示される。

  • ポリウレタンによるオブジェ

    フィッシュリとヴァイスは1980年初頭よりポリウレタンを用いた作品を制作し続けている。作業場や作家のスタジオにあるようなオブジェを手で精巧に象り、彩色を施して本物同様に再現する。工具、タイヤ、日用品等のオブジェにより構成されたインスタレーションは、その場所に住むあるいは使用する人の存在を漂わせる。また、物体としての存在感に圧倒されるが、その物質感と雑然とした様相の中に、もろさとはかなさを秘める。

  • 1979 カラー写真
    24 x 36 cm

    「ソーセージ・シリーズ」

    フィッシュリとヴァイスが最初に共同で制作した作品。冷蔵庫の中、洗面所、ベッド、バスタブを舞台に、ソーセージやハムのスライス、吸いかけのタバコ等を用いて、火事、山の一場面、交通事故、歴史的事件を形にしたもの。再現された世界の物語性と用いられた素材自体の即物性の併置から、表現の在り方を模索する作家の姿勢が伺える。

  • 白黒写真
    各 10 x 15 cm

    《フォトグラフィア》

    ポストカードサイズの紙に映るのは花、波、機関車、道化師、女、食べ物、風景、都市、村落、宇宙、南洋の海賊、動物。一見すると描かれた絵にみえるこれらのイメージは、クローズアップ、モノクロ、そして露出を変えることで、既存のイメージに異なった世界を映し出した写真である。ひとつの対象に焦点を定めた手法を以て世界を全網羅しようとする作家の姿勢と、目に見える事象から不可視な内奥・社会心理を映し出そうとする試みが伺える。

  • 第50回ヴェネチア・ヴィエンナーレでの展示風景(2003)

    《質問》

    「街を治めるのは誰だ?」「銀河はどこへ向かうのだろう?」「我々は自分の意見と共に生きていかねばならないのか?」など身の回り些細なことから哲学的なものへと及ぶ問いが、止むことなく空中を漂う。10台以上のスライド・プロジェクターにより現れるこれら数々の問いは、観る/読む者に答えを出す間を与えず消えては新たな問いへと止む事なく移り変わり、同時多発に現前する。このような世界や人間心理を問う「質問」は、1981年制作の映像作品《ゆずれない事》の最後のシーンで主人公のネズミとクマが社会システムを図式化し、実際、冊子として発表された《秩序と清潔さ》(1981)の中に現れる。その後、ポリウレタンで成形された大きな壷型の作品《質問の壷(大)》(1986)では、内側全面に渦状に質問が書かれる。また、2002年には『幸せは僕を見つけてくれるかな?(Findet Mich Das Glück?)』という書物となる。質問は現在も増え続けている。
    ※解説:北出智恵子
    All images: © The artists. Courtesy The artists; Galerie Eva Presenhuber, Zürich; Sprüth Magers Berlin/ London; Matthew Marks Gallery, New York

作家プロフィール

  • photograph © Walter Pfeiffer

    ペーター・フィッシュリ / Peter FISCHLI(1952-)
    ダヴィッド・ヴァイス / David WEISS(1946-)

    ともにチューリヒ生まれ、同地在住。

    1970年後半、アーティスト、ウルス・ルッティとの交流や、当時チューリヒのアートシーンにおいて中心的な場であったバー「コンティキ」等を通じて親交を深める。1979年、ソーセージやハムで日常を再現し写真に撮った風景画「ソーセージ・シリーズ」を、1981年、自らネズミとクマに扮し、社会システムの矛盾を暴き、自らの秩序を構築しようとする映像作品《ゆずれない事》、冊子《秩序と清潔さ》を制作。以降、様々なメディアを柔軟に操り、「日常」をテーマに共同制作を続けている。一つのシリーズ、モチーフに膨大な時間が費やされる表現には、極大と極小、平凡と非凡、道理と不条理、秩序と無秩序が混在し、新たな世界像が提示される。2003年ヴェネチア・ビエンナーレで発表した《無題(質問)》で金獅子賞受賞。

Images

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館 [(財)金沢芸術創造財団]

共催:

読売新聞東京本社北陸支社、美術館連絡協議会

後援:

スイス大使館

助成:

スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団

協賛:

ライオン、清水建設、大日本印刷

協力:

ルフトハンザ カーゴ AG、カトーレック株式会社、NECディスプレイソリューションズ、 Ufer! Art Documentary