金沢21世紀美術館と国立工芸館の所蔵作品によるコラボレーション展

「ひとがた」をめぐる造形

2022年7月23日(土) - 2022年9月11日(日)

インフォメーション

期間:

2022年7月23日(土) - 2022年9月11日(日)
10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館
展示室6

休場日:

月曜日(ただし、8月15日を除く)、8月16日(火)

料金:

一般:750円(600円)
大学生:520円(410円)
小中高生:260円(200円)
65歳以上の方:600円

※本展観覧券は同時開催中の「特別展示:オラファー・エリアソン」との共通です。
※( )内はWEB販売料金・団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで


日時指定WEBチケット購入について:
入場時間枠:
[1] 10:00~11:00 [2] 11:00~12:00
[3] 12:00~13:00 [4] 13:00~14:00
[5] 14:00~15:00 [6] 15:00~16:00
[7] 16:00~17:00 [8] 17:00~18:00
[9] 18:00~19:00 [10] 19:00~20:00
※ [9][10]は金・土曜日のみ
販売分:前月1日の10:00〜

日時指定WEBチケット購入

・日時指定WEBチケット及び当日券は、指定の入場時間枠ごとの数量限定販売となります(先着順・予定数量に達し次第販売終了)。
・展覧会場入り口にて、購入済みページの二次元コード画面または印刷したものをご提示ください。
・各時間枠の開始直後は、入場待ち列ができることがあります。


友の会会員について:
予約不要でいつでもご入場いただけます。(ただし、当日の混雑状況により入場制限の可能性があります。)

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

あなたの目の前に高さ40センチほどの、人の形をした作品があります。あなたは「人形」だと思いますか。それとも「彫刻」だと思いますか。また、その作品がヤキモノだったとしたら「陶芸」でしょうか。さらにそれが等身大だったらどうでしょう。このように、人の形をした造形の中には、大きさや素材・技法などを手掛かりにしてそれが何であるかを考えることが少なくありません。しかし、それが作品を鑑賞することに重要かどうかは判断が難しいことがあります。
現代の若者像を着想の原点に、陶による表現で作品を構築する北川宏人(1967年生まれ)や、伝統的な博多人形の技法を用いつつ、ロマンあふれる作品を生み出す中村信喬(1957年生まれ)らの人の形をした造形「ひとがた」を通して、あらためて「工芸」や「美術」を考える機会とします。

ゲスト・キュレーター 唐澤昌宏(国立工芸館館長)

関連プログラム

絵本を読もう

期間:2022年9月4日(日) 11:00〜11:40
会場:金沢21世紀美術館 キッズスタジオ
料金:無料
対象:子どもからおとなまで(小さなお子さんは保護者の方とご参加ください)
定員:先着4組

唐澤昌宏氏(国立工芸館 館長)講演会

本展ゲストキュレーターの唐澤昌宏氏(国立工芸館館長)をお招きし、トークを開催します。
日時:7月23日(土)16:30~18:00
場所:金沢21世紀美術館レクチャーホール
登壇者:唐澤昌宏(国立工芸館館長)
料金:無料
定員:一般70名(要事前申し込み・先着順)
申込方法:当館WEBサイトのお申し込みフォームにて受付

出品作品(予定)

  • 北川宏人《TU07005−スキンヘッド》2007年
    北川宏人《TU07007−水玉》2007年
    中村信喬《遥かなるローマ》2018年
    アクセル・ローマン・ルーカス《無題》2000年
    アクセル・ローマン・ルーカス《無題》2001年
    (以上、国立工芸館所蔵)

    北川宏人《ニュータイプ 2005—ホワイト》2005年
    北川宏人《ニュータイプ 2005—ワンピース》2005年
    北川宏人《ニュータイプ 2005—グリーン》2005年
    北川宏人《ニュータイプ 2005—ブルー》2005年
    中村信喬《輝く海》2010年
    中村信喬《羅馬聖光》2011年
    中村信喬《聖堂》2011年
    グレイソン・ペリー《敏感な子供の苦境》2003年
    グレイソン・ペリー《何がいやなのか?》2006年
    (以上、金沢21世紀美術館所蔵)

ゲストキュレーター

  • 唐澤昌宏(からさわ まさひろ)

    1964年愛知県名古屋市生まれ。愛知県立芸術大学大学院美術研究科修了。愛知県陶磁資料館(現、愛知県陶磁美術館)学芸員を経て、2003年に東京国立近代美術館主任研究員。2010年に工芸課長。2020年より現職。2018年第39回小山冨士夫記念賞(褒賞)受賞。専門は近・現代工芸史。日本陶磁協会賞選考委員。著書に『窯別ガイド日本のやきもの 瀬戸』(淡交社)、共著に『日本やきもの史』(美術出版社)、『やきものを知る12のステップ』(淡交社)など。主な企画・監修に、「青磁を極める-岡部嶺男展」、「現代工芸への視点―茶事をめぐって」、「日本伝統工芸展60回記念-工芸からKŌGEIへ」、「青磁のいま―受け継がれた技と美 南宋から現代まで」、「The 備前―土と炎から生まれる造形美―」、「近代工芸と茶の湯のうつわ―四季のしつらい―」など。

主な出品作品(国立工芸館所蔵作品)

  • 左:北川宏人《TU07005−スキンヘッド》2007年 
    国立工芸館蔵
    撮影:斎城卓

    右:北川宏人《TU07007−水玉》2007年 
    国立工芸館蔵
    撮影:斎城卓

  • 中村信喬《遥かなるローマ》2018年
    国立工芸館蔵
    撮影:エス・アンド・ティ フォト

  • 左:アクセル・ローマン・ルーカス《無題》2001年
    国立工芸館蔵
    撮影:アローアートワークス

    右:アクセル・ローマン・ルーカス《無題》2000年
    国立工芸館蔵
    撮影:ニューカラー写真印刷

主な出品作品(金沢21世紀美術館所蔵作品)

  • [参考画像]
    北川宏人
    左より:
    《ニュータイプ2005―ワンピース》2005年
    テラコッタ、アクリル彩色、H168×W34×D28cm
    《ニュータイプ2005―ブルー》2005年
    テラコッタ、アクリル彩色、H170×W42×D30cm
    《ニュータイプ2005―グリーン》2005年
    テラコッタ、アクリル彩色、H171×W38×D44cm
    《ニュータイプ2005―ホワイト》2005年
    テラコッタ、アクリル彩色、H171×W36×D32cm
    (全て)金沢21世紀美術館蔵
    撮影:福永一夫

  • [参考画像]
    中村信喬
    左より:
    《輝く海》2010年
    陶土、H35×W16×D12cm
    《羅馬聖光》2011年
    陶土、H42×W18×D15cm
    《辺月》2011年
    陶土、H39×W16×D17cm
    《大聖堂》2012年
    木、H65×W28×D20cm
    《聖堂》2011年
    陶土、H41×W17×D15cm
    (全て)金沢21世紀美術館蔵
    撮影:渡邉修

  • 左:グレイソン・ペリー《何がいやなのか?》2006年
    陶、H145×φ60cm
    金沢21世紀美術館蔵
    撮影:末正真礼生

    右:グレイソン・ペリー《敏感な子供の苦境》2003年
    陶、H101×φ54cm
    金沢21世紀美術館蔵
    撮影:末正真礼生

アーティストプロフィール

  • 北川宏人

    1967年滋賀県(日本)生まれ、東京都在住。
    金沢美術工芸大学彫刻科を1989年に卒業した北川宏人は、その当時、日本で盛んであったモニュメンタルな野外彫刻には興味が持てず、常に自身の関心の中心にあった具象彫刻の流れが息づくイタリアへ留学した。イタリアで出合ったテラコッタの古典的彫刻技法に魅了された北川はこれを習得し、日本のアニメーションのキャラクターを彷彿とさせるシリーズ「ニュータイプ」を発表。2005年に帰国後は、さらに「ポスト・ニュータイプ」シリーズを展開。一貫して土肌の風合いを生かしてアクリル絵具で彩色する手法により、独特の人間像の表現を開拓している。
    北川宏人は、都会の雑踏で出会うごく普通の若者たちの姿やさりげない表情の中に、新しい生き物としての可能性を見いだし、その姿態を粘土で描き出す。進化の途上にある現代人の浮遊するアイデンティティが宿る肉体として、最も土に近い低火度の焼物であるテラコッタを選んだ。北川は土のテクスチャーを生かすべく、焼成後にアクリル絵具で彩色する。テラコッタの表面は水性のアクリル絵具をよく吸い込むため、表面が絵具の塗膜に覆われず、土肌の表情がそのまま保たれるからだ。「ニュータイプ2005」のシリーズは、イタリアでの14年間の制作活動を経て2005年に帰国した北川が、最初に手掛けた等身大の作品群であると同時に、同シリーズの一つの帰結となった。身長約170センチメートルの人間像は、服の色や身なりの特徴によって、それぞれホワイト、ワンピース、グリーン、ブルーと名付けられている。一見したところ無表情に見えるが、凛と自立する像にはいずれも不思議な懐かしさが漂う。

  • 中村信喬

    1957年福岡県(日本)生まれ、同地在住。
    福岡県無形文化財保持者であった二代目人形師中村衍涯(えんがい)の長男として生まれ、京都にて人形制作の修行後、1980年に博多人形師の家業を継ぐ。人形作家・林駒夫(重要無形文化財保持者)に師事。1989年に日本工芸会正会員となる。日本伝統工芸展を主な発表の場所とする中村信喬であるが、作風は日本彫刻と西洋彫刻の長所を掛け合わせたハイブリッドなもので、現代的である。近年では大型の屋外彫刻やインスタレーションも手掛けている。
    展示する作品は、「天正遣欧少年使節」を題材にして、一体ごとに、海、太陽、月といった象徴的な意味を込めて制作された。天正遣欧少年使節は、1582年(天正10年)に九州のキリシタン大名、大友宗麟、大村純忠、有馬晴信の名代としてローマに派遣された4名の少年を中心とした使節団で、ヨーロッパで日本の存在が知られるきっかけとなった。その物語をロマンチックな雰囲気で表現する美しい作品群である。服装や髪型など、当時の雰囲気を伝えながらも独自の想像を加えており、一体ごとに顔の表情やポーズが異なる。海を渡り、異国の文明との出会いを描いた叙事詩的な作品である。

  • アクセル・ローマン・ルーカス

    1962年ノルハイム(ドイツ)生まれ。
    店舗及びウインドウ・ディスプレイのデザインを学んだ後、1983年から人形制作へと進んだ。磁器の鋳込みによる制作。きわめて写実的な作風に映るが、特定のモデルや写真等を用いず、少量の資料のほかは自身の経験や記憶などから作品を生み出している。作品の1点1点からは、目鼻立ちや肢体のバランスに作者固有の様式が認められる。また、現実の人間とはわずかに調子をずらした彩色からも、これが一種のファンタジーであることがうかがい知ることができる。
    アクセル・ローマン・ルーカスの作品は、「経験の蒐集」を通して形づくられている。そこには経験や記憶に限らず、影響を受けたものも含まれている。ゆえに、そっくりにつくるというよりも、インスピレーションを得た中から新しいものを導き出す。その際、人形や彫刻というジャンルの区別ではなく、「人の形」=「ひとがた」であることが重要視されている。また作品には、磁土が持つ光が透けて見える独特の素材感が生かされている。これは伝統的なビスク・ドールと同じ素材感であり、その上に絵の具を塗り重ねることで、生々しいほどにリアルな存在感が得られるとともに、まるで光が内側から発しているような印象をも与えるのである。

  • グレイソン・ペリー

    1960年チェルムズフォード(イギリス)生まれ、ロンドン在住。
    1980年代半ばから、暴力、偏見、性的抑圧、文化や信仰、自己とは何であるかといった諸テーマに関し、ユーモアやファンタジーを交えつつ、鋭い視点で捉えた作品を制作。ペリーが手掛ける陶芸作品では、古典的な形の壺の表面に描き重ねた現代的主題と、豊かな色彩や装飾との重層的な絡まり合いが見る者の想像を膨らます。陶芸のみならず、彫刻、写真、版画から、キルトやドレスのデザインに女装という行為まで、ジャンルを超えた活動と強烈な表現内容で国際的な注目を集め、2003年にはイギリスの現代美術のアーティストに授与されるターナー賞を受賞。
    無邪気に遊ぶ子供たちの情景を表したかのような《敏感な子供の苦境》には、よく見ると武器や薬物を手にする少女らや、事故の現場を思わせる場面が淡々と描かれ、日常と隣り合わせの暴力や抑圧の影が浮かび上がる。様々な消費材にブランドロゴ、サッカー選手やモデルの姿が描かれた巨大な壺《何がいやなのか?》は、現代人の消費癖をきわめて豪華な装いで皮肉る。「陶芸」「壺」といった技法・形態は、一般的に親しみやすさや無害さを見る者に感じさせるが、ペリーはこのような印象を逆手に取り、自らの世界の扉をやすやすと開けさせ、我々を作品に対じする位置へと引き込む。人間の本性について鋭い批判精神とユーモアをもって描き出すペリーの姿勢は、いかなるメディアによる作品であっても共通する。彼はまた、自ら女装した姿をしばしば作品に表すが、民族衣装風のドレスを着て銃を構える「クレア」として登場する写真作品では、自身の身体やアイデンティティを直接的に絡めつつ、暴力など、より普遍的な社会の問題を照射する。

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]

企画協力:

国立工芸館