ソンエリュミエール、そして叡智

2012年9月15日(土) - 2013年3月17日(日)

インフォメーション

期間:

2012年9月15日(土) - 2013年3月17日(日)
10:00〜18:00 (金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館

休場日:

月曜日(ただし、9月17日、10月8日、12月24日、1月14日、2月11日は開場)、9月18日(火)、12月4日(火)〜12月13日(木)、12月25日(火)、12月29日(土)〜1月1日(火)、1月15日(火)、2月12日(火)

料金:

■「ソンエリュミエール、そして叡智」 の観覧券
<当日>
一般=1,000円
大学生・65歳以上=800円
小中高生=400円

<前売・団体>(団体は20名以上)
一般=800円
大学生=600円
小中高生=300円


■「ソンエリュミエール、そして叡智」と「ス・ドホ -パーフェクト・ホーム」 の共通観覧券

<当日>
一般=1,700円
大学生・65歳以上=1,400円
小中高生=700円

<前売・団体>(団体は20名以上)
一般=1,400円
大学生=1,100円
小中高生=600円

前売りチケット取扱:

チケットぴあ
tel.0570-02-9999
Pコード
[本展観覧券]765-301
[共通観覧券]765-303

ローソンチケット
tel.0570-000-777
Lコード
[本展観覧券]55332
[共通観覧券]55339

販売期間:8月15日より3月17日まで
※共通観覧券は10月23日より3月17日まで

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

近代市民社会は経済発展及び科学技術により豊かさと自由を獲得してきたかにみえる。情報化社会において迅速さ快適さ手軽さが幸福であり、有益な価値であると見なされてきた。しかし同時に、その利益を追求するために人間生活はますます管理されることになった。つまり、自分が属する社会の制度と権力に支配されているということである。2011年3月の東日本大震災と福島での原子力発電所事故は、安全と幸福と自由という社会の基盤を根底から覆した。人間の自由を実現するための民主主義社会が選びとってきた経済システムや社会システムは、今や人間社会の継続を脅かすものとなってしまった。

「ソンエリュミエール、そして叡智」では、そんな絶望の中にありながら、世の中の矛盾に正面から向き合い、立ち続けようとする人間の可能性を探る。ここに紹介される作家の作品は、人間社会を鋭い眼差しで捉え、その膿みをあぶり出す。あるいは絶望自体も取り込み、半ば自虐的ともいえる手法で、それでも生き抜こうとする現代人の姿を映し出そうとする。彼らの表現は、不自由で身動きのとれない人間社会の構造を暴く。絶望を未来への種として、苦痛と混沌の渦中にもがくはかなくも生命ある存在として人間の有り様を見つめる。

金沢21世紀美術館キュレーター 北出智恵子

関連プログラム

奈良美智 アーティスト・トーク

日時:2013年2月17日(日)14:00 - 16:00(開場:13:40)
会場:金沢21世紀美術館 シアター21
料金:無料(但し、本展観覧券が必要)
定員:100名
※当日10時より、レクチャーホール前(本多通り口)にて整理券を配布します。
 予定数に達し次第、もしくは12時をもって締め切ります。

「ソンエリュミエール - 物質・移動・時間、そして叡智」記念プログラム アーティスト・トーク

出演:秋山陽、木村太陽、サイトウ・マコト、田嶋悦子、Chim↑Pom
コメンテーター:松村忠祀(大湊神社 宮司、元福井市立美術館長、出品作品所蔵者)
日時:2012年9月15日(土) 13:30〜17:00(開場 12:30)
場所:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
料金:無料(ただし、当日の本展観覧券が必要)
定員:先着60名(空席がある場合、途中入場可)

<タイムスケジュール>
13:30〜 はじめに
13:45〜 木村太陽
14:20〜 サイトウ・マコト
14:55〜 卯城竜太(Chim↑Pom)
15:30〜 田嶋悦子
16:05〜 秋山陽
16:40〜 おわりに

梅田哲也パフォーマンス

日時:2012年9月15日(土) 18:00〜19:00(終了予定)
集合:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
会場:金沢21世紀美術館 展示室
料金:無料(ただし、当日の本展観覧券が必要)
定員:先着60名
※パフォーマンス中の途中退場は自由です。

鈴木ヒラク ライヴ・ドローイング

日時:2013年1月26日(土)10:00〜20:00
会場:金沢21世紀美術館「ソンエリュミエール、そして叡智」展覧会場ほか
料金:無料(但し、展覧会会場内への入場には「ソンエリュミエール、そして叡智」の当日観覧券が必要)
出演:鈴木ヒラク
   ゲストミュージシャン 植野隆司(テニスコーツ)

作品・作家解説

  • Chim↑Pom《SUPER RAT》2011-12
    © 2011 Chim↑Pom
    Courtesy of MUJIN-TO Production, Tokyo

    チンポム Chim↑Pom

    2005年にエリイ、卯城竜太、林靖高、水野俊紀、岡田将孝、稲岡求で結成。
    Chim↑Pom は、極めて個人的な興味から世界が直面する問題や闇の部分を、自らの身体を介入した極めて直接的な行為(アクション)により露呈し、写真や映像に記録するという表現活動で、活動開始直後より注目を浴びて来た。活動の根幹ともいえる「SUPER RAT」は繁華街に生息するクマネズミを自身が虫取り網で捕獲する行為を記録し象った作品。2006年、渋谷センター街で制作した当時、Chim↑Pomは、駆除され続けた結果、毒代謝能力が高まったネズミ「スーパーラット」を用い、都市に生き抜く姿として自身らと重ね合わせ、自画像として制作した。本展出品作品は、2011年の原発事故後に、このモチーフに向き合い、新宿にて制作したものである。環境及び生活が脅かされる中生き生きとした生命力を放つ、来るべき人間像として捉えている。

  • 《「ロス・カプリチョス」62番
    いったい、誰が信じるだろうか!》1797-98
    エッチング、アクアティント、ビュラン/紙
    H20.5×W15.0 cm
    大湊神社蔵
    撮影:渡邉修

    フランシスコ・デ・ゴヤ Fransisco de GOYA

    1746年サラゴサ(スペイン)生まれ、1828年ボルドー(フランス)にて逝去。
    地元の画家に指事し絵画を修行。1770年から約1年イタリアにてフレスコ画等の絵画技術を学ぶ。1773年マドリードに移住、タペストリーの原画制作に従事。1786年、当時のスペイン国王カルロス3世付きの画家となり、1789年にはカルロス4世の宮廷画家となる。1792年病に倒れ聴覚を失うが、その後に今日のゴヤの代表作と評される作品を多く描き上げた。啓蒙思想に傾倒しつつ、18世紀から19世紀にかけてのスペインの動乱期において、絶対王政、フランス革命の影響、ナポレオン独立戦争等、主席宮廷画家という画家としてスペイン最高位に着きながら、人間と人間社会の悪を作品に露にした。80点からなる「ロス・カプリチョス」(気まぐれ、自由気ままという意味)においては、魔女、動物や化け物等擬人化した登場人物を用いて、国家や社会的権力者、政治、宗教、因習を鋭く風刺する。さらに後の「戦争の惨禍」においては、戦争という残虐行為を直視し、狂気、偽善、醜悪を辛辣に批判する。ゴヤは、自らの芸術表現において、人間世界の欺瞞、欲、悪をえぐり出すという姿勢を貫いた画家であった。

  • 《Feel Your Gravity》2005
    雑誌
    H30xW23xD0.8 cm (8点)
    金沢21世紀美術館蔵
    © KIMURA Taiyo
    撮影:斎城卓

    木村太陽 KIMURA Taiyo

    1970年神奈川県(日本)生まれ、同地在住。
    木村太陽は、1990 年代初頭から、牛乳パック、ゴミ袋、洗濯籠など、この国で生活すれば誰しも必ず目にする日常的にどこにでもあるものを用い、彫刻、インスタレーション、映像作品を制作している。人間の身体的な違和感や生理的な不快感、独特のユーモアや残虐さが混在する作品世界は、人間の存在性についての探求であり、一貫して木村の制作テーマとなっている。
    《Feel Your Gravity》は8冊の女性雑誌をに掲載された複数の目を切り出したもので、作品の表面には、同一の化粧品広告が選ばれている。メディアに掲載された人間の目のみを抽出することによって、群衆の心理が浮かび上がり、管理社会(の制度の監視下)に生きる人間のあり方さえも彷彿させる作品になっている。

  • 《bacteria sign (circle)》2000
    土、枯葉、アクリル/ 木製パネル
    H45×W45×D0.9 cm
    金沢21世紀美術館蔵
    © SUZUKI Hiraku
    撮影:斎城卓

    鈴木ヒラク SUZUKI Hiraku

    1978年宮城県(日本)生まれ、神奈川県(日本)在住。
    フィールド・レコーディングなど音をメディアとした表現を模索していたが、次第に土と葉を素材とする平面を手がけ始める。以降、ライブペインティング、インスタレーション、壁画、紙に描くドローイング、映像など、制作は多岐にわたる。しかし一貫して、鈴木ヒラクはごく身近な素材や環境と自身が密接に関わりながら見出される、生成、変容の現場としての「ドローイング」または「描く」という独自の表現活動を探求している。本展出品の正方形の《bacteria sign(circle)》約80点は視覚表現に移行した鈴木の最初期の作品。土を敷き、枯葉を埋め込み、葉脈の部分を掻き起こすという発掘的作業により現れる様々な円の線と形は生成の瞬間であり場そのものである。

  • ペーター・フィッシュリ
    ダヴィッド・ヴァイス
    《音と光ー緑の光線》1990
    フラッシュライト、回転台、
    プラスチック製コップ、テープ
    H25×W40×D16 cm
    金沢21世紀美術館蔵
    © Peter FISCHLI David WEISS
    撮影:渡邉修

    ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス Peter FISCHLI David WEISS

    ペーター・フィッシュリ:1952年チューリヒ(スイス)生まれ、同地在住。
    ダヴィッド・ヴァイス:1946年チューリヒ(スイス)生まれ、2012年同地にて逝去。
    1979年より活動、ミニマリズム、コンセプチュアリズムといった概念主導の美術動向の中、支配構造への反発から起こったパンクの精神を備えた彼らは、身近な光景や事物に真摯な眼差しを向け、ありふれた素材と明解な仕掛けという手法で自身の技術の範囲で膨大な時間とエネルギーを注ぎ制作する。その表現は、極大と極小、平凡と非凡、道理と不条理、秩序と無秩序が混在し、人間社会の本質を浮き彫りにする。《音と光―緑の光線》は、既製品の組み合わせによる機械仕掛けの彫刻。野外用の携帯ランプの緑の光が、ターンテーブル上を転がる使い捨てコップに投影されることにより背後の壁に光と影のムービング・イメージが映し出される。
    「Son et Lumière(ソン・エ・リュミエール)」は、一般に屋外の建物や施設で見られる音楽をともなう光のショーを、「Le rayon vert(ル・レヨン・ヴェール)」は、夕日が水平線上で緑色に輝く現象を意味する。様々なメディアを柔軟に操り、身近な光景や事物に真摯な眼差しを向け、意味のずれや解釈の多様さを綿密な計画、偶然性によって提示する。

  • ジェイク&ディノス・チャップマン
    《ディノスとアドルフⅤ》2008
    水彩、インク
    H9×W12 cm
    © the artist
    Courtesy White Cube

    ジェイク& ディノス・チャップマン Jake&Dinos CHAPMAN

    ディノス・チャップマン:1962年生まれ、ロンドン(英国)生まれ、同地在住。
    ジェイク・チャップマン:1966年生まれ、チェルトナム(英国)生まれ、ロンドン在住。
    ともにロンドンの美術学校ロイヤル・カレッジ・オブ・アートを90年に修了、ギルバート&ジョージのアシスタントを経て、二人で制作をはじめる。1991年、ゴヤの連作銅版画「戦争の惨禍」の拷問や奇形の身体を描いた場面を取り出し象ったジオラマ《Disasters of War》を制作、高い評価を得る。以後、ゴヤをはじめとした美術史上の名画、社会論や哲学を参照し、ナチズム、ホロコースト、宗教、ファシズム、消費社会を題材に繊細かつ精巧な彫刻、絵画、エッチングを制作。残虐さと卑猥さが前面に打ち出された表現には、人間の本能的欲望を暴き、西欧社会、資本主義社会への懐疑と痛烈な批評精神が表れている。

  • 《Fountain of Life》2001
    FRP、ラッカー、ウレタン、モーター、水
    H175×diam. 180 cm
    作家蔵
    © Yoshitomo Nara
    Courtesy of Tomio Koyama Gallery
    撮影:内田芳孝

    奈良美智 NARA Yoshitomo

    1959年青森県弘前市(日本)生まれ、栃木県(日本)在住。
    愛知県立芸術大学大学院修了後, 1988年より渡独、93年にドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミー修了。以後ケルンを拠点に制作活動を行い、拗ねたような、冷めた目をした子どもや動物をモチーフとした絵画、ドローイング、立体、インスタレーションが国際的に高い評価を得る。2000年より活動拠点を日本に移し、国内外で多数の展覧会を開催。近年は陶芸やブロンズによる立体も手がけている。本展には、2001年制作の《Fountain of Life》を出品。目からこぼれつづける涙には、不安、悲しみ、そして怒りにも通じる感覚が呼び起こされる。不安と不信の社会の中、行き場のない人間の精神を予見したような姿はまさに現代人の精神を映し出していると言える。

  • 《パルス・ルーム》2006
    白熱電球、電圧調整器、心拍センサー、
    コンピューター、金属製の彫刻
    サイズ可変
    金沢21世紀美術館蔵
    © Rafael LOZANO-HEMMER
    撮影:福永一夫

    ラファエル・ロサノ=ヘメル Rafael LOZANO-HEMMER

    1967年メキシコ・シティ(メキシコ)生まれ、モントリオール(カナダ)、マドリード(スペイン)在住。
    電子テクノロジーや体の動きが直接作用するインターフェイスを用いて、一時的な場、時間、人の関係性に焦点をあて、建築物や場と実際に関係を結ぶような大規模でインタラクティブなインスタレーションを展開している。
    テクノロジーと歴史の共存、移動の概念が色濃く反映されたプロジェクトは都市空間に潜在するコミュニケーションの重要性を浮き彫りにし、また、新たな関係性の構築を探求している。《パルス・ルーム》は体験者一人一人の心拍が電球の明滅のリズムに変換される作品である。約300灯の白熱電球がそれぞれ異なる明滅のリズムで空間をともす。ラファエル・ロサノ=ヘメルが本作品について「memento mori(メメント・モリ)」と喩えるように、宙に浮く灯火は生命力の集合体として示される一方で、存在のはかなさを想起させる。

  • 梅田哲也 《ぬ間》2010
    (喜楽亭での展示風景)
    © UMEDA Tetsuya
    撮影:松尾宇人
    (参考画像)

    梅田哲也 UMEDA Tetsuya

    熊本県生まれ、大阪府在住。
    2000年前半頃より、パフォーマンスを発表し始め、2002年には「Festival
    Beyond Innocence」に参加。2005年、展覧会「sun and escape」に参加。
    以降、ライブ出演や展覧会参加、ミュージシャン、パフォーマー、美術家との
    コラボレーションなど国内外で幅広く活動する。現場となる空間に身を置
    き、耳を傾け、音の流れと身体との関係性を探り、身近な家電、日用品や廃
    品などを組み合わせ、気圧、重力、電流、水流といったエネルギーを用いて、
    時に機械のエラーや予測不可能な人の動きや自然現象を組み込む手法で
    制作する。そうして空間自体に潜在する可能性を引き出し、モノの光と音と
    運動が奏でる即興的な現象を立ち現す。インスタレーション、演奏、パ
    フォーマンスのいずれにも捉えられるその形態には、「音」を軸に、時間と空
    間を交差する独自の領域が創出される。

    ※展示室6《迷信の科学》、《ほとんどすべて忘れている》の展示は11月4日までです。

  • 村上隆《シーブリーズ》1992
    鉄、ステンレス、シャッター、水銀灯、
    キャスター、車輪、換気扇、点滅灯
    H350×W480×D250 cm
    金沢21世紀美術館蔵
    © 1992 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd.
    All Rights Reserved.
    撮影:福永一夫

    村上隆 MURAKAMI Takashi

    1962年東京都(日本)生まれ、東京都(日本)、ニューヨーク(米国)を拠点
    に活動。
    東京藝術大学で日本画を学び、1993年同大学大学院にて美術研究科博士後期課程修了。1989年の初個展にて日本画とプラモデルを用いた作品を発表。以後、アニメ、マンガ、オタクなどに代表される日本文化の独自性を前面に押し出す手法で世界に挑戦してきた。その活動は作品制作にとどまらず、ファッション産業とのコラボレーション、展覧会の企画、アートフェア「GEISAI」を主宰するなど、新たな局面を開拓し続けている。2012年にはカタールにて大規模な個展を開催。中でも高さ3メートル、全長100メートルの大作《五百羅漢図》は、日本社会の歪みと絶望の中を前進する態度が示された。
    《シーブリーズ》は、初期の代表的作品。巨大な構造体に水銀灯16 灯が、ロケットの噴射口のように片側8 灯ずつ、背中合わせに取り付けられている。両側にあるシャッターが開くと、総電気量16,000ワット分の熱と光が放たれる。重々しい装いながら、瞬時に観る者の目を幻惑し、全てを突き放すようなエネルギーに満ちた作品である。

  • 《Light》 1952
    インク、パステル、クレヨン/ 紙
    H27×W18.7 cm
    金沢21世紀美術館蔵
    © Yayoi Kusama
    撮影:斎城卓

    草間彌生 KUSAMA Yayoi

    1929年長野県松本市(日本)生まれ、東京都(日本)在住。
    50 年以上にわたって創作活動を続ける草間彌生は、国内外の美術に多大な影響を与えてきた作家である。1950 年代初頭より国内で作品を発表しはじめ、1957 年に渡米。その後、活動の拠点をニューヨークに据え、インスタレーション作品や様々なパフォーマンスを展開していく。1970 年代に日本に帰国し、現在に至る。幼い頃からの自身の体験を絵に表すことを原点に、大規模な平面、立体、空間作品を展開し、特に、反復的で増殖的なドットや網の表現は、草間独自の世界像である。

  • Ever Is Over All, audio video installation,
    1997 by Pipilotti Rist (installation view
    at Kunsthalle Zürich by Alexander Troehler)
    Courtesy the artist, Hauser & Wirth and
    Luhring Augustine

    ピピロッティ・リスト Pipilotti RIST

    1962年ラインタール(スイス)生まれ、チューリッヒ(スイス)在住。
    グラフィック・デザイン、写真、ヴィデオ、アニメーション等多岐にわたる分野の習得、さらにロックバンド活動等の経験がピピロッティ・リストの作品の独自性を際だたせる。体の部分を極端にクローズアップさせ、また故意に歪ませ不快感を煽るアングル、ラディカルでコミカルな人の行動の描写と、ミュージックヴィデオのようにポップで流動的な色彩に満たされた映像・音楽とが融合した表現が特徴的である。リストの作品には異質さとグロテスクさが混在しながらも人間という存在への優しい眼差しが窺える。《Ever Is Over All》は空間一体を覆う2画面の映像からなる作品。鮮やかに咲き誇る花々のクローズアップと、軽やかなハミングとともに闊歩する女性が次々と駐車中の車の窓ガラスを破壊する場面が併置される。音楽と映像技術を巧みに用いながら、はかなくも力強く、過激ながらも親近感のある世界には、混沌の現代を軽やかに生き抜く人間の美しさが表現されている。

  • 「サンセット〜 サンライズ・アーク」 光庭プロジェクト

    植物学者パトリック・ブランによる恒久展示作品《緑の橋》のある光庭空間全体が植物の空間となるプロジェクト。ブランが研究対象のひとつとしている植物・朝顔が光庭の通路と壁を覆う。ブランが朝顔の種を選択、レイアウト、さらに2007年に当館にて実施された日比野克彦「明後日朝顔プロジェクト21」から生まれた《「明後日朝顔プロジェクト21」の種》も加わることにより、「共生」をキーワードに多層の時空が込められた朝顔による新たな風景がここに生まれる。朝顔の生長そして結実としての種は、時間・地域・記憶の込められた生命活動そのものとして、不特定多数の人々へと語られ、つながれていく。

    サンセット〜サンライズ・アーク:NEWS PAPER TIMES
    日比野克彦より:
    2012年に光庭で育成された朝顔の記憶を掲載した新聞を発行いたします。発行場所は光庭。
    約9m×10mの紙は、光庭に注ぎ込む光、雨、風により日々変化していきます。この変化を毎日の情報を記載し発行する新聞と見たてます。

    展示期間:2013年1月4日(金)〜2013年3月17日(日)
    ※観覧には本展のチケットが必要です。
    発行部数:1部(サイズ 約9m×10m)


    パトリック・ブラン Patrick BLANC
    1953年パリ(フランス)生まれ、同地在住。
    1989年、科学分野の国家博士号を取得。植物学者でもあるブランは、植物の環境への適応力を研究してきたが、きわめて限られた条件の中でも植物が生育することに着目したのがきっかけで、建物の外壁などに特別なフェルトを貼って、植物を植え込み垂直の庭をデザインする作品を展開している。パリのカルティエ現代美術財団、ケ・ブランリー美術館等に作品が設置されている。


    日比野克彦 HIBINO Katsuhiko
    1958年岐阜市(日本)生まれ、東京都(日本)在住。
    日比野克彦は、1980 年代、段ボールを素材とする作品で注目を集め、以来、デザイン、舞台美術、パフォーマンスなど、ジャンルを横断した活動で時代を切り開いてきた。1990年代よりワークショップを数多く行い、この経験は、自身の表現活動に大きな影響を与えることとなった。「他者」との出会いを通して「自己」に向き合う経験は、「ホーム→アンド←アウェー」方式と名付けられ、現在の活動の核となっている。

    詳細はこちら

関連リンク

クレジット

主催:

金沢21世紀美術館 [公益財団法人金沢芸術創造財団]

後援:

スイス大使館