巨大な写真の制作を続けてきたジェフ・ウォールは、現代美術において新たな写真の位置づけを確立した作家である。ウォールは、自身が実際に目撃した出来事をしばしば再構築し、複雑に編成して風景を作り上げる。彼自身はこの制作プロセスを「映画的写真 (シネマトグラフィック・フォトグラフ) 」と呼ぶ。出品作の《垣根を通り抜ける少年達》は、映画制作のようなプロセスによってセッティングされ、一つのイメージを結実させた。そのイメージは、透過光フィルムの裏から光を当てるライトボックスの手法によって成立している。事実と虚構を巧みに混在させて成立する世界は、一見スナップショットのような特質をもつが、実は精巧に作り上げられたイメージである。

(1946年バンクーバー生まれ、同地在住)


《垣根を通り抜ける少年達》

2003
トランスペアレンシー (透過光フィルム) 、ライトボックス
204 x 260 cm、エデション 1/2
オルブライト=ノックス美術館蔵
By exchange, Gift of Seymour H. Knox, Jr. and
the Stevenson Family, 2004
©Jeff Wall
Courtesy: Marian Goodman Gallery, New York