ヨーガン レール 文明の終わり Jurgen Lehl The End of Civilization

2017年8月5日(土) - 2017年11月5日(日)

インフォメーション

期間:

2017年8月5日(土) - 2017年11月5日(日)
10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)

会場:

金沢21世紀美術館
展示室5、13

料金:

■本展観覧券
一般=1,000円(800円)
大学生=800円(600円)
小中高生=400円(300円)
65歳以上の方=800円
※( )内は団体料金(20名以上)及び前売りチケット料金
※「日々の生活ー気づきのしるし」展と共通のチケット

休場日:

月曜日(ただし8月14日、9月18日、10月9日、10月30日は開場)、9月19日(火)、10月10日(火)

お問い合わせ:

金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

自然とともに暮らし、その尊さを伝えてきたデザイナー、ヨーガン レール(1944-2014)が「最期の仕事」に選んだのは、深刻な環境の問題に向かい、海岸に打ち寄せられた廃品のプラスティックから美しい照明を作り出すことでした。決して自然に還ることのないプラスティックが、再び実用の場を与えられ輝き出します。
また、展覧会ではこれらの照明と共に、ヨーガン レールが、その唯一無二の美しさに魅了され、長い時間をかけて拾い集めた、ババグーリ/瑪瑙石を展示いたします。この対照的な展示には、2014年に急逝したヨーガン レールの、自然への敬意をもって生きることの強いメッセージが込められています。

作家プロフィール

  • Photo: MINAMOTO Tadayuki

    ヨーガン レール

    1944年、ドイツ人。
    1971年に来日、ヨーガン レール社を設立。
    オリジナルのテキスタイルやジュエリー、また家具や器など幅広いデザインを手がける。
    2006年、環境に配慮し、手仕事のものづくりを大事にしたブランド、Babaghuri(ババグーリ)を始める。
    2014年、逝去。

ヨーガン レールの言葉

  • 石垣島のビーチでゴミを拾うヨーガン レール
    Photo: TAHARA Ayumi

    「文明の終わり」 (2014年9月)

    沖縄にある海辺の家で1ヶ月の3分の1を過ごすようになって、15年になります。 畑を耕し、創作のアイデアを練る合間に、犬の散歩と気分転換を兼ねて家の前の浜辺におりるのが私の日課ですが、その度に悲しみと怒りが綯い交ぜになったような複雑な気持ちになるのです。
    砂浜を歩きながら、美しい貝殻や珊瑚のかけらを拾うのを楽しみにしていますが、貝殻や珊瑚にも増して目に付くのが、流れ着く大量のゴミだからです。
    時にはガラス製の古いブイが流れ着いていたりして、面白く思うこともありますが、流れ着くゴミのほとんどは醜いプラスチック製品のなれの果て・・・。発泡スチロールの切れ端、 ペットボトルのふた、洗剤の容器や子供のおもちゃなど、日本のものもあれば、どこかアジアの国から流れ着くものもあります。見つける度に拾い集めるのですが、次の日にはまた流れついています。
    とうとう私はそれらのゴミを集めて、色ごとに分類して何かを作り出そうと思いました。 ゴミだけで何かを作り出せるほどに沢山流れ着くので、そのことを多くの人に知って欲しかったからです。
    先日、旅をして与那国島の浜辺に降り立つ機会がありました。砂に足を踏み入れて歩くうちに何ともいえない違和感を覚えました。思わず砂に手を差し込んでつかみ、目をこらしてみて衝撃を受けました。砂の中に、砂と同じくらい細かく砕かれたプラスチック片が、びっしりと混ざっているのが分ったからです。
    遠目には美しく見える砂浜なのに、こんなことになってしまっている。誰でもない、人間がしたことです。これは文明の終わり・・・、私にはそう思えてなりませんでした。
    私は日本人ではありませんが、この国に来て40年以上も住んでいます。美しかった日本を覚えています。もしも許されるなら、ずっとこの国で暮らしたい。
    だから知って欲しいのです。こんなに汚れてしまったことを、そして、ゴミを取り除くことの必要性を、ゴミを出さない暮らしの重要性を。これは日本だけの問題ではなく、世界中に伝えたいことです。
    ゴミには目に見えるものもあれば、目に見えないものもあることを皆さんはご存じでしょう。そのどちらも増え過ぎれば、文明の終わりを招き寄せます。おそらく地球自身は、自浄の努力をしていることでしょう。けれど、浄化のための大きな力になるのは、一人ひとりの小さな人間の力の集結でしかないのです。
    もし、多くの人がそのことに気付くために何かができるなら、今しなければならないと思う気持ちを止めることはできません。
    醜いプラスチックのゴミを大量に見せただけでは、その恐ろしさを分かってもらえないのなら、私はそのゴミを使って、何か自分が美しいと思うものを作り出す努力をします。ただ美しいただけのオブジェではなく、もう一度人の役に立つ実用的なものに変えましょう。これは、ものを作ることを仕事にしている私の小さな抵抗です。それによって、この大量のゴミに目を向けてもらえるように。私はこれを自分の最後の仕事だと思っています。

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クレジット

主催:

金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]